Hブリッジ回路

原理・読み物

モータをスイッチで制御する場合,図1の(a)か(b)の形となる.ちなみに(a)および(b)において,左が回路図,右が電池を想定した例である.図をみて分かるように,スイッチをオンにするとモータが動き,オフにするとモータが止まるものである.(a)と(b)の違いはモータの前にスイッチがあるか後にスイッチがあるかの違いである.この場合,両者に違いはない.

motor control with switch

図1. スイッチでモータ制御

モータを正逆回転できるようにスイッチを考える

モータは電圧をかける方向を変えることで正回転および逆回転させることができる.その実現方法として以下の二つの場合について考える.

  1. ±Vcc使える場合

    モータ駆動電圧として,正負異なる電源を使える場合に図2で表される回路が使用できる.左が回路図で右が電池を想定した例である.この回路はTブリッジ回路と呼ばれ,正電圧側のスイッチをオンにすると正回転(とする)し,負電圧側のスイッチをオンにすると逆回転する.ただし,二つのスイッチを同時にオンにすると正負の電圧間を短絡し危険である.

T bridge circuit

図2. Tブリッジ回路

  1. +Vccしか使えない場合

    図3の回路は,Hブリッジ回路と呼ばれるものである.モータの駆動電圧が1つで済み,また正回転・逆回転に加えてブレーキ機能を持つ.それぞれスイッチ(入力)に対する機能を以下の表に表す.

    欠点としては,ちょっと複雑.部品点数が増えてしまう.イコール,製作時に間違いやすい.

    ただし,最近ではHブリッジ回路に様々な保護回路がくっついたものを一つのICにパッケージしている製品があったりするので,買ってくるなら楽である.

H bridge circuit

図3. Hブリッジ回路

H-bridge Circuit function
SW1 SW2 SW3 SW4 機能
OFF OFF OFF OFF ブレーキ
ON ON OFF OFF ブレーキ
ON OFF OFF ON モータの左から右へ電流が流れ,正回転(とする)
OFF ON ON OFF モータの右から左へ電流が流れ,逆回転
ON OFF ON OFF モータの左側のラインが短絡!危険!この設定は禁止
OFF ON OFF ON モータの左側のラインが短絡!危険!この設定は禁止

電気信号で操れるスイッチ一覧

モータの制御を考えると,PC・マイコンの出力ポートをモータにつなぎ,直接ON/OFFを行うのが一番簡単である.つまり,PC・マイコンにスイッチになってもらう方法である.ただし,一般的にはPC・マイコンの出力ポートを直接モータ等に繋げることはしない.

その理由は,「電気の使い方」が違うからである.モータを駆動させるためには電力としての電流が必要であり,電力の量(特に電流の量)が行う仕事量となる.一方,モータの動きを制御するPC・マイコンなどは演算を行う機械であり,信号レベルの電流を扱う.演算結果は電力には必ずしも比例せず,特に速さは電圧・電流が少なければ少ないほど早い傾向にある.このように一般的には,電力としての電流は大電流が必要であり,信号としての電流は流れなければ流れないほどよい.そのため,PC・マイコンの出力ポートも信号としては5V(1,High),0V(0,Low)などを出力できるが,実際に5V駆動のモータを動かすだけの電流を出力できないことが多い.

そこで,PC・マイコンからの出力信号をもとに大電流を制御する部分が必要となってくる.ここでは主に電解トランジスタ(FET)に注目する.FETによって,信号レベルの入力に応じて大電流のON/OFF制御を実現することができる.

リレー

トランジスタ

電流-電流制御.ベースに付与した電流(小)によってエミッタ・コレクタ間の電流(大)を制御する.

大電流を制御するためには,制御用のベース電流も結構いる.そのためマイコン等(あまり電流を出力できない)で電流制御する場合,大電流を制御するのは難しい?

FET

電圧-電流制御.ゲートに付与した電圧によってドレイン・ソース間の電流を制御する.より具体的には,ゲートに電荷をため(等価:コンデンサ),その電荷の量によって電流を制御する.そのため電荷をためる/放出するためだけの電荷の移動がゲートに流れる電流であり,トランジスタに比べて制御用のゲート電流はいらない.

制御対象の回路(ドレイン・ソース関連)と制御用の回路(ゲート関連)が(一応?)電気的に分離している.そのため制御対象のノイズなどが制御用回路に影響を与えにくい.

とも言えない気がしてきたのでペンディング.

トランジスタに比べて応答速度がはやい

ときいた記憶がある.要確認

FETの理解

理解のために.正孔と電子

(古典物理からの見方)

  • 電子:原子核の周辺に存在するマイナスの電荷をもった粒子である.電流の流れる方向は電子の流れる逆となる.
  • 正孔:元来あるはずの場所に電子がない場合を考える.電子がある状態が通常だとすると,電子がない状態とはその場所に「あな(孔)」がありその電荷は「プラス(マイナスの状態を0・普通・基準とする場合の見方)」であると見ることができる.これをプラスの電荷をもった質量マイナスの粒子であると考え,正孔とする.電流の流れる方向は正孔の流れる方向と一致する.
electron, positive, current

図4. 電流と電子・正孔の関係

アバウトな動作原理

FETはゲートにかけた電圧でドレイン・ソース間の電流を制御する.ゲートにかけた電圧はゲートに電荷として溜まり,制御するための電圧となる.その電圧を生むためのゲート・ソース間電流およびドレイン・ソース間の電流を生むものとして,電荷の「キャリア」を考える.すると電荷の「キャリア」としては「正孔」と「電子」が考えられる.正孔をキャリアとするFETと電子をキャリアとするFETを考えることができ,それぞれp型FET,n型FET(名称ちょっと適当)と名づけることができる.

p型FETは正孔をキャリアとするので,ソースからドレインに電流がながれるFETである.また,ソースからゲートに向けて正孔が移動するので,ゲートの方が電位が低くなる.よって,ソースの電位を基準に考えた場合に,ゲート・ソース間電圧が0Vの時スイッチはOFF,ゲート・ソース間電圧が-Vgs(-5Vとか)Vの時スイッチがONとなる.

n型FETはその反対で,ドレインからソースへ電流が流れ,ゲート・ソース間電圧がVgs(+5Vとか)Vの時にスイッチがONとなる.

fet-outline

図5. FETの動作原理

MOS FETの図記号

MOS型のFETの図記号は以下のようになる.

mos-fet

図6. MOS-FETの図記号

MOS FETの使い方・基礎前

基本的にはドレインに負荷をつなげる.

起動電圧(Vgs)の安定化のため?
how-to-use-mos-fet

図7. MOS-FETの基本的な使い方

MOS FETの使い方・基礎

最も基本的な回路は以下となる.

  • R1はゲートに過度な電流が流れないように制限するものである.
  • R2は挙動の安定を図るものである.ゲートが接続されていなかったりすると静電気等で電荷を持つ場合がある.この場合,半ON状態になり動作が安定しない.また,信号先がマイコンなどで小電流しか扱えない場合,電圧を変更してもゲートから電荷が素早く移動しない.このとき,電荷の道となるためのもの.
how-to-use-mos-fet

図8. MOS-FETの基本的な使い方2

Vgs(信号電圧)の決め方

スイッチとして使う場合にはオーム抵抗領域で使用する.

  • 2SJ334の場合には,Vgs=6V以上
    • データシートより -20 < Vgs< 20
ID-VDS

図9. ID-VDS

R1の決め方

とりあえず 5kΩ

R2の決め方

とりあえず 20kΩくらいで

放熱設計

とりあえずほっとく

FETによるモータ駆動

FETによるHブリッジ回路

最終的に作成するHブリッジ回路は以下のようになる.

how-to-use-mos-fet

図10. FETによるHブリッジ回路

ブレッドボード実験

Hブリッジ回路の自作

参考画像:図11

トランジスタのみで実装してみたもの

  • 製作者:みやざきん
  • 写真家:北山直樹
how-to-use-mos-fet

図11. 参考画像

回路の駆動テスト

  • モータを繋げ,入力に応じて動いているか確認する.
  • たまにICを触って熱くなっていないか確かめる.
    • 熱くなっていると,短絡などおかしい可能性が高い.

モータドライバICを使用した回路の作成

モータドライバICはHブリッジ回路に加え過電流に対する保護回路などが内蔵されているICである.基本的にはHブリッジ回路に対する信号とモータへの出力からなる.各ICのピン番号を見ながら,自作と同じようにモータを繋げ,入力に応じて動くものをつくればよい.

  • モータドライバICの有名どころ
    • TA7291P

以下はTA7291Pを二つ用い,二つのモータをコントロールする回路の参考画像である.抵抗・コンデンサを全く使用していない,”とりあえず回路”.

how-to-use-mos-fet

図12. 参考画像

ユニバーサル基板によるHブリッジ回路の実装

回路の駆動テスト