これまでにロボットが用いられてきた環境は非常に限定的でした. 社会で用いられているロボットは工場のラインで使用されているロボットが主であり,単調な仕事を限定的な環境で行うものです.この限定的な環境,というのは,なるべく人が入らず,突発的な変化が起こらず,毎日同じ状況を再現している環境です. 一方,研究・開発で用いられるロボットは,初期はシミュレーション(コンピュータ内に構築した仮想環境下)で動かされていました.現在もシミュレーションは重要な役割を担っていますが,次第に実機を用いた研究・開発も行われるようになってきています.その際,実機が用いられる環境は,ロボットが動きやすいように外乱・ノイズがあまりなく,実験毎に同じ状況を再現できるように整えられます. このような工場等での環境,シミュレーション,および研究開発における実験環境における特徴は,人が環境をコントロールすることができ,ロボットを用いる前にどのような環境であるのかを予想することができることです.環境をコントロールすることでロボットの用い方は飛躍的に簡単になります(それでも難しいのですが). しかし,ロボットの適用範囲を広げ,より身近に,より便利に用いるためには整えられた環境から私達が生活している実際の環境でロボットが動作することが必要になってきます.ここで,私達が生活している環境,とはロボットのために特別に用意された空間ではなく,私達が物理的に移動可能な空間全てを指します.それは,私達が住む一般家庭内で動くことから,究極は他の惑星に行って動くことまで対象になります.その難しさは,複雑性(関連する要因が無限にある),リアルタイム性(時間に応じて不可逆的に変化していくため時間制約が存在する),開放性(何かを考える時に無視してよい環境とそうでない環境とに分けることができない)などがあります. #ref(ロボットが直面する環境 実環境.png,center,zoom,50%) #ref(ロボットが直面する環境 実環境.png,center,zoom,75%)