工学において知能研究を行っていくうえで,他の工学系分野では見られない特有の問題があります.それを明確にするために,まず一般的と思われる工学部における研究の流れについて説明します.

工学における研究の流れでは,まず目標の設定が行われます.次に目標を実現するための方法を考えます.どのようなアプローチで目標実現を行うのか?どのような手法が使え,どのような結果を出すことによって目標実現を確かめるのか?そしてどのようなスケジュールで行うのか?それが決定したらスケジュールどおりに実験を行い,結果を出します.出てきた結果が予想通りの場合もあれば,予想外の結果やうまくいかなかった,という結果の場合もあります.そこで重要なことは,「予想通りの結果を得る」ことではなく,出てきた結果を正しく評価し考察することです.予想通りうまくいったのなら何故うまくいったのか?どのくらいうまくいったのか?よい結果を得られなかったのなら,何故得られなかったのか?よい結果を得るためにはどのような改善が必要か?このように考察を行うことで,行った研究をもとに改善・発展させた更にすばらしい研究を行うことができます.

ここで,工学における知能研究とは,「知能の実現」が目標となります.しかし,様々な分野で共通に議論されていることは「知能って何?」ということであり,いまだに「知能」の定義が定まっていません.このことは,目標とする「知能」の定義が定まっておらずあいまいであることを示しています.目標となるものがあいまいだと,その目標達成に対する客観的な評価を行うことができません.それはつまり,行った研究がよいものなのか価値のあるものなのかを論じることができず,これからの研究としてどのように改善・発展を行っていくべきかというビジョンも見えにくくなります.

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